ボロずきんの冒険


エセル・J・フェルプス編 上杉佐代子訳 学陽書房(1993)
女の子のための世界の民話という副題がついていて、世界中から拾った13のお話が載っています。権力と富の付属物として扱われてきた女性たちが、自分が生きる道は自分で決めるという独立心や自立心そして知恵と勇気を存分に発揮していろいろな困難を乗り越えてゆく昔々の痛快なお話集です。少女のお話は、因習にとらわれず自由を求め、老女は何事も楽観的に、豪快に笑いとばしながら、強く生きてゆくのです。他の光によって生き、青白く輝くしかなかった時代に、このような生き生きとした民話が語り継がれてきていたというのが素晴らしいこと。
現代でも女性差別問題はとても深刻で複雑ですから、これらのお話に共感し、勇気もいっぱい含まれているように思えます。そのようにおおげさに(?)考えなくとも、スルッと気持ちが温まる大人も楽しめる本ですよ。
訳者の上杉佐代子さんは、実はhahatenのすぐそばにおりました。「合唱団」が一緒です。この方は「アメリカ女性史」の研究者ということで、もっと早くにいろいろ専門のお話を伺っておけばよかったと思います。
この本の後書きによると、1982年アメリカ滞在中にご友人からこの原書を娘さんの誕生日のお祝いにもらったのだそうですが、当時アメリカには70年代の女性差別からの開放を求める運動の成果として、性別役割を否定した子供向けの本がどこの図書館にもあったそうです。しかし、日本ではそのような児童書はなく残念に思っていたことがきっかけとなり、この本の出版に至った経緯が書かれています。
短編なので読みやすく、長編を読むにはチョット苦労なhahatenにとって、久し振りに全編読み通しました。手元においておきたいですが、古本でなければ手に入らないようで残念です。札幌市の図書館の蔵書は4冊です。

そして、タイトルのボロずきんの表情が孫のリサちゃんに似ているのも気に入りました。プレゼントしたいぐらい。
原書は TATTERHOOD and OTHER TALES ed.by Ethel Johnston Phelps となっています。


挿絵も見ごたえありますね。